昭和一桁生まれのひとりごと 第186回 京北実業学校へ入学
【第186回】
2008年7月15日
《京北実業学校入学》
昭和14年の主な出来事を列記しておきます。
1月15日 この日は前に書きました「横綱 双葉山」が「安藝ノ海」に破れて69連勝で止まった日です。
1月30日 内務省から「防空壕心得帖」が配布されました。
1月 勧銀で女子の結婚奨励のために、28歳定年制だと。
2月16日 ポストなど鉄製品の回収。
3月30日 大学でも軍事教練が必修となる。
4月1日 私の「京北実業学校」の入学式。
いよいよ、今日から「京北実業学校」の入学が始まりました。
先ず自分の「組」が発表されましたので、組ごとに校庭に集合させられます。そして、長々と校長の訓辞です。父兄は誰も来ていません。
校長の訓辞が終わると、各組の担任の先生が各教室に引率して、席を決めます。
一年坊主から始まりましたが、小学校の時と全く違うことが多かったです。
今までは、半ズボンだったのが、今度は長ズボンで詰め襟の制服です。何だか慣れていないせいもあって、着心地は良くありません。それに今まではランドセルだったのが、白い綿製の肩掛け鞄になりました。そして此の鞄は教室の自分席の端に掛けることになりました。
そして今度は、男女共学ではありませんから、女生徒はいません。それで一学年四組です。それも1組~4組ではなく、「仁組」「義組」「礼組」「智組」と陰陽五行論から採った「仁・義・礼・智」なのです。
そして、教室の席順ですが、組が決まると生徒を各組ごとに一列に並ばせます。それも背の高い順番です。担任の先生が、列を見て参ります。そして順番を決めると、一列縦隊で教室に入り、背の低い者から順番に、一番前の席から埋めて行くのです。
「組」はどういう風に決めるのか分かりませんが、1年生の時は、どうやら入試試験の成績で、1番の者は「仁組」、2番の者は「義組」、3番の者は「礼組」、4番の者は「智組」、・・・そして5番の者は又「仁組」と云うように決めたらしいです。
だから、頭の良い奴だけが集まらないように配慮したらしいですね。これは2年~5年まで同じやり方だったようです。
ですから、1年ごとに組も変われば、担任の先生も替わる訳です。
私は1年、2年、3年、4年まで4年間もすべて「礼組」で、5年生の時だけ「智組」でした。つまり一度も1番の成績にはならなかった・・と云う訳です。
此の学校は、「明化小学校」の近くでしたが、宮下町の自宅から約2Kmありました。学校から2Kmまでの距離は、自転車通学禁止、バス・市電に乗っての通学禁止です。雨の日も風の日も、雪の日も、鞄を掛けて、長靴履いて歩いて行かなければなりません。「質実剛健」戦時中でもありましたから、みんな歩いて通学していました。但し、2Km以上の距離から通っているものは、大抵市電でした。学校の正面が「曙町」の停留所でしたから。
省線巣鴨駅から丁度2Kmで、歩いて20分くらいでした。市電の停留所は・・巣鴨駅→西丸町→駕籠町→曙町・・でした。市電の料金は7銭で、乗合自動車は5銭でした。
此の学校の校門を入ると、校庭の左側に「京北中学校」、右側に「京北実業学校」、そして正面に石段があって、一段高い所に「東洋大学」がありました。
此の三校の他に「京北幼稚園」もありましたが、何れも学祖は「井上円了」と云う哲学博士です。
此の博士の業績と生涯を次の項目で記して置きたいと思います。
『京北実業学校に入学 昭和14年4月』
此処で、京北実業学校の「校歌」を披露しておきます。私は残念ながら、戦時中に失いましたので、同期生の「酒井安正」氏が未だ健在でおられますので「歌詞」を提供していただきました。
【京北実業学校 校歌】
♪① 京の北なる常磐がをかべ
輝く望みの影をば慕ひ
朝の呼び来る長鳴鳥の
名に負ふ処に吾等は集ふ ♪
♪② 善き友善き師の導きうけて
互にはげまし互にきそひ
この道行ひこの業習ひ
吾等は誠の国民たらむ ♪
♪③ 教に遵ひ望を追ひて
吾等は進まむ日にはた月に
汚さで伝へし学びの庭の
その名を高めむ鶏がねよりも ♪
此の「校歌」には「長鳴鳥」とか「鶏かね」等の言葉が出て来ますが、これには江戸時代からの伝説があるようです。この文京区小石川2-23地区は「鶏声ヶ窪」(けいせいがくぼ)と云われていました。
北村辞典によりますと、下総の国古河藩土井家の下屋敷があったと云いますが、此の屋敷に鶏の声が響き、「金鶏」が掘り出されたと云われています。戯曲「三味線栗毛」は鶏声ヶ窪の酒井雅楽頭の下屋敷が舞台となっており、その酒井家の下屋敷跡にあった「鶏声の井戸」の旧跡の歌碑が白山5丁目にあると云います。
京北実業学校の正面玄関の脇には、井戸の縁に立った「鶏」が天に向かって鳴いている姿のブロンズ像が設置されています。
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